尾道空き家再生のパイオニア・豊田雅子が起こした奇跡:坂の街を蘇らせた情熱と実践
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豊田雅子のキャリアは、建築や都市計画の専門家として始まったわけではない。大学卒業後、彼女は大阪の旅行代理店で添乗員として勤務していた。世界各国の街並みを巡るなかで、彼女の目に焼き付いたのは、欧州の都市が持つ歴史的建造物への深い敬意だった。何百年も前の石造りや木造の建物を丁寧に手入れし、現代の暮らしと融合させて住み続ける人々の姿に強く感銘を受けたのである。
久しぶりに帰郷した尾道で彼女が目にしたのは、幼少期の記憶にある活気豊かな街並みではなかった。所有者が去り、雑草に埋もれ、朽ち果てるのを待つだけの魅力的な古民家群。行政の解体予算を待つだけの状態に陥っていた建築物を見て、豊田は強い危機感を抱く。
「壊すのは簡単だが、一度失われた歴史的景観は二度と取り戻せない。」
2007年、彼女は自らローンを組み、坂の上にある崩壊寸前の明治時代の木造建築を購入した。これが、後に空き家再生の象徴となる「ガタゴト荘」である。専門知識もないまま、建築家や職人、友人たちの手を借りて自力でのリノベーションを開始した。この個人的な一歩が、後に大きな社会的ムーブメントへと広がっていく。